御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
別れる直前は相当お金に困っていたのか、私の部屋に入り浸りヒモのようになっていた彼。しかし、口から出るのはいつも強気で夢見がちな言葉だった。
「もしかして、最上階、とか?」
興味本位で、ついそんな質問を副社長に投げかけた。彼はきょとんと目を瞬かせ、ふっと苦笑する。
「最上階はワンフロアを丸々占有する特別な間取りなので、ひとり暮らしの僕には大きすぎますよ。エレベーターで下に降りるのも時間がかかるし、災害の時に怖いのでちょうど真ん中くらいの階に住んでます。それでも眺めはいいですよ」
「……なるほど。そうですよね」
副社長の言い分に納得する。
物件を選ぶ時に住みやすさを第一に考えるのは当然だ。つまり、軽々しく『最上階に住もう』なんて言っていた元恋人は、なーんにも考えていなかったわけだ。
叶わない夢を得意げに語って、自分を大きく見せようとしていただけ。
タワマン最上階に住む自分をほんの少しでも想像した過去の自分が、今さらだけどものすごく恥ずかしい。
「興味があるならいつでも来てくださいね」
「えっ?」
「最上階じゃなくて残念かもしれませんが、芦屋さんが来てくれるなら精一杯おもてなししますよ」
副社長はそう言って、極上の黎也スマイルを浮かべる。日当たりの悪いマンションで節約生活をしている日陰者の私には、眩しすぎて目がくらみそうだ。