御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
「才賀先生の心を動かすために、芦屋さんはなにが必要だと思いますか?」
事務所を辞し、行きと同じく私には分不相応な送迎車で副社長と共に会社に戻る途中。後部座席で隣り合う彼に、そう聞かれた。
窓の外では日が暮れ始め、空が茜色に染まっている。
私は先ほど才賀先生にも見せたタブレットの資料を開き、考えながら口を開いた。
「私が気になったのは、改装後のショッピングエリアのイメージ画像でしょうか。あの部屋を見てもわかる通り、才賀先生って自然……とくに植物を愛する方じゃないですか。でも、このイメージ画像だと観葉植物のひとつもなく無機質な印象です。それがお気に召さなかった可能性はあるかも、と」
内装に関しては専門業者に委託しているけれど、基本的には御門ホテルの方針を尊重するはず。緑を多くしたいと依頼すれば、対応してもらえるだろう。
「なるほど。それはありそうですね。僕は、シビアに賃料を下げろと言われている気がしました。先生が価格の一覧表をかなり真剣にご覧になっていたので」
「確かにじっくり見てましたね……」
「賃料のことは少し、社長とも相談してみます。あとは……なにか先生の想像を超えるものを用意したいですよね。僕たちを試したかったにしろ、あそこまで言われっぱなしじゃ悔しいですし」
副社長が、険しい顔で腕を組む。