御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
基本的には穏やかな俺も、こんな研修になんの意味があるのかと心がすさんでくる。
それでも父親の意向に従って研修先を転々とし、入社してから二年が経った頃。新たな研修先として出向いたのが、芦屋さんのいるリーシング部だった。
『指導係の芦屋です、よろしくね。正直、人手不足だったから助かる……! 仕事、どんどん振っちゃっていい? わからないところは教えるから』
美人で気さくそうな年上の女性。第一印象はそんな感じだった。
俺には芦屋さんの隣のデスクが与えられ、彼女のアシスタントのような立ち位置で仕事を教わりながら、テナントリーシングの仕事について理解を深めていった。
『テナント入れ替え工事の件、御門くんが各部署に根回ししてくれたお陰でスムーズだったって。ありがとう』
ある日の終業直前、芦屋さんが一本の電話を受けた後、うれしそうに報告してくれた。これまでの研修先では仕事で褒められることなどなかったので、素直に心が弾んだ。
『ほんとですか? よかった』
『ホントホント。もうすっかり大きな戦力だから、このままリーシング部で働いててほしいくらい』
『……俺もそうしたいな』
リーシング部はこれまで経験したどの部署より居心地がよかったため、俺は思わずそう呟いていた。
最もお世話になっている芦屋さんには日に日に好感を抱くようになっていたし、上司の谷村さんも、忖度などまったくしない気持ちのいい人柄だったから。