御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~

 しかし、俺の甘えたようなセリフを聞いた芦屋さんは、持っていた書類で軽く俺の頭をはたいた。

『なに言ってるの。御門くんは、これからもっと大きな仕事を任される人でしょ。いつかあなたが社長になって、会社を成長させていく。その姿を見るの楽しみにしてるんだから、頑張って』

 芦屋さんからの先輩らしい励ましと、眩しいほどに綺麗な微笑み。俺が彼女に落ちたのは、あの一瞬だったと思う。

 彼女と仕事をするうちに惹かれていた気持ちがそこで一気に昂り、今すぐに愛を告白したいような気分になる。

 しかし――。

『芦屋。下に彼氏が迎えに来ていたぞ。終わってるなら早く行ってやれ』

 外出から戻ってきた谷村さんが、オフィスに入ってくるなり芦屋さんにそう伝える。

 彼女はたちまち頬を赤くして慌てだした。

『えっ? もうですか? 早っ……』
『愛されてる証拠だな。これからデートか?』
『はい。彼の誕生日をお祝いする約束で』

 そう答える芦屋さんは本当に幸せそうで、俺は恋を自覚した直後に、失恋の痛みに苛まれることになる。しかし、芦屋さんのような女性に恋人がいるのは当然だとも思った。

 綺麗で頭がよく、扱いづらい社長の息子にもフラットな立場で親切にしてくれる、優しい人だから。

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