御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
銀行員やコンビニ店員が詐欺を防いだニュースは時々耳に入ってくるものの、まさかこんなに身近で似たような事件が起こるとは思ってもみなかった。
万が一そういう現場に遭遇したとしても、美冬さんのように咄嗟に行動を起こせる人は少ないのではないかと思う。
「……許せないんです」
そう呟く彼女の声は、感情を押し殺したように震えていた。
詐欺を働こうとした犯人に対する怒り……?
「誰を……ですか?」
美冬さんはきゅっと下唇を噛んで言いよどんだものの、深く息を吸うと、苦しげな表情で俺を見た。
「人の心を弄んで、お金をだまし取る人です」
まるで、彼女自身がその被害者であるかのような、切実な口調だった。
その言葉と、これまで美冬さんと交わした会話、質素な生活ぶり、恋愛を避けようとするかたくなな態度などが、頭の中で次々と繋がっていく。
美冬さんはもしかして……結婚詐欺か、またはそれに近い被害に遭った過去があるのではないだろうか。そう考えれば、彼女のあらゆる思想や行動に説明がつく。
本当はすぐにでも真相を彼女に確かめたかったものの、間もなくコンビニに警官がやってきて、美冬さんを含めた関係者に聞き取りを始める。
俺自身も次の仕事が迫っていたため、その場では結局なにも聞けないまま店を後にするのだった。