御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
ウエストのベルトがきちんとした印象を与えてくれるワンピースに、かっちりとしたジャケット。どちらもパッと見で上質さがわかるし、肌触りも心地いい。それから履いているパンプスにバッグ、首元のネックレスまで、すべてが副社長のチョイスだ。
「買ってくれたのか? すごいな」
「私は遠慮したのですが、交渉のためだからと押し切られてしまって。あの、決して無理にねだったとかではありませんので……!」
谷村さんに誤解されないよう、私としては不本意なのだと強調する。昼休みに自分の作ったお弁当を食べていた時も、この服を汚してしまわないよう気を張りすぎてまったく食べた気がしなかった。
「なるほど。……頑張っているな、副社長」
ふむふむ頷いたかと思うと、なにやら訳知り顔で微笑む谷村さん。頑張っているというのは、今回のプロジェクトに賭ける思いが強いという意味だろうか。
「確かに、気合いは入ってますよね。賃料の件で社長にもかなり強くかけ合ったみたいですし」
「私が言ったのはそういう意味じゃない」
「えっ?」
「……さ、行こう。道が混んでないといいんだが」
谷村さんは煙に巻くようにそう言って、スタスタと先を歩いて行ってしまう。
なんとなく釈然としないものを感じるけれど、今は大事な仕事の前。私はすぐに気持ちを切り替えて、谷村さんの後を追った。