御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
「うーん、おかしいなぁ……」
才賀先生が、私の用意した渾身の資料を眺め終わってからしきりに難しい顔をして似たようなことを呟いている。
先日案内されたのと同じ、緑に溢れた彼の事務所の一室。谷村さんは冷静に彼の様子を見つめているけれど、前回の記憶が若干トラウマの私はまたなにか先生の気に障ったのではないかと、気が気ではない。
でも、やれることはやったはず。
「いかがでしょうか、先生」
長い沈黙を破って、谷村さんが問いかける。すると才賀先生は、これ見よがしに深いため息を吐いた。
やっぱり、ダメだったの……?
「今回はどこにケチをつけてやろうかと、隅々までよーく見たんだけどね。見れば見るほどこれまでアプローチしてきたどの企業よりも魅力的な計画だから、断る理由が見つからなくて困っているところです」
そう言って才賀先生が浮かべた苦笑は、これまで見た彼の表情のどれよりも自然で、人間らしかった。
それって、つまり……。
「御門ホテルへのテナント出店を、前向きに考えてくださるということでしょうか?」
私は思わず前のめりになって、彼に尋ねる。
才賀先生もまたずいっとこちらに身を乗り出して、にっこり微笑んだ。