罠に落とされた生贄姫は、荒野の悪魔の最愛となる
「う……が、が……がひゅ」

 眩い閃光。
 足元から崩れおちる彼女の胸から真っ赤な炎が噴き出していた。
 護衛が一斉に戸口を振り返ると、指折り何かを数える男の姿がそこにあった。

「いーち、にー……なるほど十人か。ばっかだねぇ、あんたたち。たったそれだけの人数で閣下に勝てるとでも思ったの?」

 人を食ったような笑みを浮かべるのは、ひょろりとした優男だ。

「なんだ、きさまは!」
「名乗る必要ないと思うよ。だってあんたら、どうせここで死んじゃうんだし」

 細い切れ長の瞼から覗くのは紅蓮の瞳。
 瞳の奥に火花が散る。パチリ。男が瞬いた。

 パチリ。

 パチリ。

 瞬くたびに炎が上がる。喉が焼け、声を上げる事も出来ず、火柱と化す体。肉の焦げる匂いと煙が辺りにゆっくりと満ちて行く。
 後方を断たれ、逃げる事を諦めたのだろう。残った護衛は剣を握り直し魔王の元へ一斉に駆けだしていく。

 ――シルヴィは。

 シルヴィは、ただ見ている事だけしかできなかった。

 人が潰れ、肉塊になっていく姿を。
 炎に包まれ、消し炭になっていく姿を。





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