(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「……私は、立花さんに本当の意味で向き合っていなかったのね……」


自分に言い聞かせるような辺見さんの物言いに、恋愛経験値が高くもない私はなんて声をかければいいかわからなかった。

そもそもなにが正解かなんて判断すらできない。

そのとき扉の向こう側で大きな声が聞こえ、荒々しい足音が響いて思わずふたりで立ち上がる。


「沙和!」


突然個室の扉が勢いよく開き、視線を向けた先には焦った様子の愁さんが立っていた。


「愁、さん?」


名前を呼んだ途端、長い腕が伸ばされて胸の中にきつく抱き込まれた。

いつもきちんと整えられている髪は崩れ、額には汗が浮かび、端正な面立ちには険しい表情が浮かんでいた。


「……よかった、無事で」


無理やり絞り出したような低い声が微かに震えていて、彼がどれだけ心配してここまで急いで来てくれたのかを知った。


「……大丈夫、心配をかけてごめんなさい」


そっと広い背中に腕を回す。

伝わる速い鼓動と温もりに愛しさが込み上げる。

同時に彼の労りが申し訳なくも嬉しかった。

大きな息を吐いた愁さんは、少しだけ身体を離して辺見さんをにらみつけた。


「沙和にかかわらないよう言ったはずだ」


氷のように冷ややかな視線と怒りの込められた声に、腰を上げた辺見さんの顔色が真っ青になる。
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