(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「……ねえ、由真ちゃん。私、社内用の靴を変えたの知っていた?」


「え? 靴、ですか?」


唐突に変わった話題に驚きながら、後輩が私の足元に視線を向ける。


「ああ、そう言われてみれば……以前はオープントゥパンプスでしたっけ?」


「そう、前の靴は気に入っていたんだけど壊れちゃって。新しい靴に変えたのはよかったんだけど、靴擦れがひどくてね」


「履き慣れるまでは結構ありますよね、靴擦れ。大丈夫ですか?」


「今は平気。少し前までは痛かったけど」


「もっと前に教えてください。私もよく靴擦れになるのでケアグッズ、会社に置いてるんです」


今度おすすめを教えます、と口にして先に席を立った由真ちゃんを見送る。

食堂内は大勢の人が出入りしていて相変わらず賑やかだ。

大きな窓から見える空は晴れ渡っている。

毎日顔を合わせ、話をして、長い時間を同じ場所で過ごしている後輩ですら私の足の異変を知らなかった。

当然だ。

私だって同僚の足の状態なんてよっぽどでない限り、きっとわからない。

それでも、板谷社長は気づいた。

会ったのは三回だけ、そのうちの一回は泥酔してなにがあったのか覚えていない。

きっとまともに歩けてもいなかったはず。

だとしたら、きちんと歩いている姿を見せたのは二回目の再会時くらい。

けれど彼は迷いなく尋ねてきた。


『ところでさっきからずっと思ってたんだが……もしかして足を痛めてる? 歩き方が以前と違う』


記憶に残る発言と表情に心がかき乱される。

こんな気持ちは初めてでどうしていいかわからない。

……私に恋愛はやはり向いていない。
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