(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
土曜日の午前十時、美術館の入り口に向かう私の耳に、すれ違う女性たちの声が耳に入った。


「ねえ、あの人カッコいい!」


「誰かと待ち合わせかな?」


女性たちの視線の先には、カーキの半袖シャツに細身のブルーデニムを身につけた板谷社長がいた。

彼の整った容貌を目にした途端、鼓動がひとつ大きな音を立てた。

緊張に似た正体不明の感情が胸の内側から湧き出る。

近寄るのになぜかためらって、足が止まった。

不意に板谷社長が視線を動かし、視線が合った瞬間、背中にしびれがはしる。

ふわりと頬を緩め、小首を傾げてゆったりと近づいてくる。


「なんで立ち止まったまま?」


「あ、いえ……ちょっと、驚いて」


お待たせしました、とか気の利いた挨拶ひとつ言えずたどたどしい返答しかできない自分に心の中でため息を吐く。


「なにに?」


「スーツ姿ではなかったので……」


見惚れていました、なんてさすがに恥ずかしくて口にできず誤魔化す。

今日は撮影会の見学とはいえ、プライベートなので普段の装いで構わないと言われていた。


「暑いし、入ろう」


美術館の入口に視線を向けながら、促される。
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