(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
戻ってきた静寂に、忘れていた失恋の痛みがぶり返す。

今夜、私がずっと片想いをしていた直属の上司の結婚発表があった。

突然の発表だったけれど部内で内輪のお祝い会が急遽開催された。

立場上、お祝いを伝えないわけにはいかないし、そもそも上司は私の気持ちなどまったく知らない。

参加していた私は必死に笑顔を貼りつけ続けた。

バッグから、帰り道で購入したお酒を飲む。

このベンチ周辺だけは飲食が許可されているのが幸いだ。

本当は水を買うつもりだったが、普段と違うことをしたくて無理やり選んだ。

元々お酒はあまり得意ではないし、見学にはふさわしくないのに。

でもどうか今夜だけは真面目さだけが取り柄の冒険心の欠片もない、二十八歳の自分じゃなくても大目に見てほしい。

好きな人に告白もできず、悲しむしかできない、情けない自分が大嫌いでギュッと強く目を閉じた。

入社した頃、二十八歳はずいぶん大人でベテラン社会人だと思っていた。

でもいざ自分がその年齢と立場になってみれば、新入社員の頃とあまり変わっていない気がする。


……目を開けたときには、強くて素敵な女性になれていたらいいのに。
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