(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
ふたりで管理人室へと向かう。

管理人室は仮の更衣室兼控え室になっており、周辺は多くの人とたくさんの機材で混雑していた。

愁さんに促され、外に置いてあるベンチにふたりで腰を下ろす。

頭上には夏の太陽に育まれた鮮やかな緑の葉が広がっていた。

生ぬるい風にさらわれて右隣に座る愁さんの艶やかな黒髪がさらりと揺れる。


「……城崎さんとはお知り合いなんですか?」


ほんの少し重くなった沈黙を破るべく、話しかけてみる。


「ああ、俺も姉貴も小さい頃からよく面倒をみてもらった」


彼の答えに先ほどの気安い会話が腑に落ちた。

けれどそれ以上会話が続かない。

どうしようと逡巡する私の耳に、愁さんのため息が聞こえた。


「悪い、気を遣わせた。城崎さんは改装の件も知っていて……俺より沙和との距離が近い気がして少し余裕をなくした」


フイと視線を逸らし、自身の口元を大きな手で覆う。

カッコ悪いな、と独りごちる姿に胸の中がじんわりと熱くなり、鼓動がひとつ大きな音を立てた。

トンと軽く私の肩に愁さんが頭を凭せ掛け、黒髪が一瞬頬に触れる。


「……城崎さんより先に知りたかった」


相変わらず絡めたままになっている指に力が込められ、首筋に吐息がかかる。

なにを?と口からこぼれそうになった疑問を必死で押しとどめる。
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