(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「……じゃあ、なぜ私を……?」


尋ねる声が掠れる。


確認する必要なんてないのに、なにを期待しているの?


「失恋に傷ついた沙和の姿が頭から離れなかったから」


ああ、やっぱり。


彼の返答がストンと心の奥に落ちた。

『婚約破棄』『失恋』は立場も重みも違うが、恋を、パートナーを失う点は同じ。

優しい視線も甘い言葉も、すべては似た立場だった私を気遣ってくれていただけ。

それ以上の感情はない。

気づいた事実が胸をきつく締めつける。


……なにを期待していたの?


「私は、大丈夫です」


最近は課長をほぼ思い出さない。

むしろ愁さんに翻弄されている時間のほうが長いくらいだ。

知らず知らずのうちに、彼の優しさに救われていた。

もう十分だ。


「沙和は器用そうに見えて実は不器用で、自分の中に感情を閉じ込めて傷ついている」


私の発言が聞こえなかったのか、さらりと予想外のことを告げられ戸惑いを隠せない。


「あの日、酔っていた沙和は悲しみを隠そうとしなかった。でも再会したときはそんな感情はおくびにも出さず、気丈に振る舞っていた。必死に踏ん張る沙和を俺の手で守りたいと思ったんだ」


「どうして……」

 
「失恋の弱みにつけ込んだと思われても、俺は沙和が欲しい」
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