(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「友人としては。恋愛対象には見れなかった」


愁さんが思い出すように口にする。

その言葉になぜかホッとする自分に驚くと同時に自分自身の反応が理解できず混乱する。


「俺はその当時、海外赴任中だった。板谷の後継者としての修業中で、仕事が最優先だった。ひどい態度だとわかっているが、自分が望んだわけでもない婚約に関心はなかった」


そう言って、愁さんは目を伏せた。

カランと水が入ったグラスの氷が揺れ、僅かな音が響く。

注文したアイスティーを先ほどと同じ店員が運んできてくれた。


「婚約破棄は俺の帰国後、きちんと話し合って決めた。元々お互いに恋愛感情や情熱もなかったから、それこそ条件や段取りの話し合いのような素っ気ないものだった」


淡々と語る愁さんの姿に自分が婚約破棄をされたわけでもないのに、胸が強く痛んで苦しくなる。


「まあ、そのせいもあって女性との付き合いを避けていたら女嫌いだとかよく言われるようになった。でも俺にとっては好都合だったんだ。大切なものができるとそれが弱みにもなる。後継者として成長するのに必死だったし、面倒事は極力避けたかった」


そう言って、長い指でアイスティーのグラスを引き寄せる。
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