(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
自宅の玄関ドアを閉めた途端、力が抜けた。

トンと玄関先のフローリングの床に崩れ落ちるようにうずくまる。


『沙和』


『可愛い』


心の中で響く声と記憶に残る体温が胸を切なく締めつける。

胸の奥からあふれ出す、言葉にできない熱い感情に、自分の想いを自覚する。


……愁さんが、好きだ。


まさかこんなタイミングで気づくなんて思いもしなかった。

出会った頃は振り回されてばかりでうんざりしていた。

強引さもすぐにからかう態度も苦手だったのに。

愁さんは私でさえ気づいていない私を見てくれていた。

彼の前で素直な自分を出せたし、凝り固まってがんじがらめになっていた私の心をゆっくり優しくほぐしてくれた。

失恋したばかりでほかの人に想いを向けるなんて絶対にないと思っていた。

なのに、恋をしてしまった。

私の名前を呼ぶ低音も、触れる骨張った指も、彼を形作るなにもかもがとても愛しくて泣きたくなる。

募る想いが大きく膨らんで心の中に収まりきれない。


でも、今さらなんて言えばいい?


ドレスのカラーですら、なんの意味もないと言われたところなのに。
 

リハビリではなく、本当の婚約者になりたいと告白したら受け入れてもらえる?


彼の本心を知りたいけれど、聞くのが怖い。

これからどんな顔と態度で愁さんに会えばいいのかわからず、ただ長い間座り込むしかできなかった。
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