(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「パーティー会場にいた人たち……噂されていたの」


「ドレスに特別な意味はないよ。恐らく色の組み合わせがうちの会社のイメージカラーだから噂されていたんだろう」


動揺ひとつ見せずに淡々と口にする。

彼の発言内容はあながち嘘でも不自然でもない。


「なぜ、愁さんはこの色を選んだの?」


「沙和によく似合いそうだったから」


「……そ、う」


さらりと返され、返答に窮する。

だって、なにひとつ受け答えにおかしな点はない。


私はいったいなにを期待していたの?


心から婚約者として望んでいると宣言してほしかったとでも?


彼は“偶然”選んだだけ、深い意味はない。

事前に私を“大切な女性”と紹介してパーティーに参加した以上、辺見さんに“婚約者”を披露する必要があっただけ。

そもそも“本気”と何度も告げる愁さんを信じ切れず、断り続けていた私には責める資格すらない。

リハビリの婚約者を受け入れたのは私自身なのに。

今頃になって愁さんの“本気”の意味と重さを知りたがるなんて自分勝手すぎる。

婚約者の色を纏っていると認めてもらえなくてショックを受けるのも。

全部わかっているのに、どうしてこんなにも胸が痛くて苦しいのだろう。


「沙和?」


心配そうに顔を覗き込む彼に向かって無理やり口角を上げる。


「送ってくれて、ありがとう。少し頭痛がするから……失礼します」


急いで告げて一礼し、うつむいたままマンション内に足を進める。

愁さんの表情を確認する勇気も余裕ももてなかった。
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