後悔しない、ひとつのこと
「落ち着いた?」

頃合いを図って声をかけてくれる。

そんな同期を持てたこと、それが嬉しい。

「真矢、ありがとう。嬉しいよ」

爽、ごめんね。

今度からちゃんと伝えるね。

「なに、急に」

真矢は、さっきまで泣いていたこと。

そんなことはなかったかのように振る舞った。

その配慮が、私には暖かかった。

ふと見上げると、真矢は何かを言いたそうに口を開いては閉じてを繰り返していた。

「魚みたいだよ」

「へっ?」

バレていないとでも思っていたのか。

私が何年、爽を理解するために行動を眺めていたのか。

...爽のすること、言うことは全て愛おしかった。

「会いたいなぁ」

そんな言葉が口から溢れた。

「会いに行ってあげて。きっと1人で心細いよ。半日、1人で待ってたんだ」

正直、今の私に爽を受け止めきれる自信はない。

でも、今会わなかったらきっと後悔する。

それだけは確かだった。

「どこにいるの?」

「車椅子、取ってくるね」

真矢は扉を開けて出ていった。

もう誰もいない場所を、ずっと見つめ続けた。
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