後悔しない、ひとつのこと
真矢はすぐに戻ってきた。
「大丈夫?立てそう?」
眉を下げて心配する真矢に言う。
「大丈夫、そんな深くないし。生きてるし」
真矢は息を飲み込んで"そっか"と呟く。
「じゃあ行こう」
しばらく移動して、着いたのは慰安室だった。
病室ではなく。
わかっていた。
でも、どこかでまだ期待している自分もいた。
目を閉じ、深く息を吸い込む。ゆっくり吐く。
何回か繰り返し、言う。
「中に入ろう」
真矢はただ頷き、中に入れてくれた。
「俺はなにも聞こえないし、見えないから」
私も病人だからだろう。
部屋に1人にするわけにもいかないからと。
少し不器用な優しさを背に、白い布がかけられた場所へ向かう。
布に手をかけ、一呼吸置く。
ゆっくりと手を動かすと、私の宝物が見えてきた。
「さわっ!」
あぁ....本当に.......この子は居なくなったんだ。
死んでしまったんだ。
どれだけ悔しい思いをしたんだろう。
私のせいで.....
私がもっと安全に気を配るべきだった。
ふと横に置かれていた爽の私物が目に入る。
警察も捜査を終え、置いていってくれたらしい。
できるだけ荷物を早く返せるようにと、捜査を急いでくれたとも後から知った。
逃げていたからだろう。
そこにはスマホしかなかった。
「バッグは家に置いてきたのね.....」
玄関に置かれたままのカバンを想像する。
あぁ、この子が ''わかってるよー''
そんなふうに言ってカバンを片付けることはもうないんだ。
次から次へと溢れ出てくる涙を。
言葉を。
せき止めることはもう、しなかった。
「さわっ、お母さんのせいでごめんね......」
まだ若いとかそんなのは関係ない。
ただ....生きていて欲しかった。
生きて、笑っていて欲しかった。
彼氏もできて恋に悩む姿も。
結婚して幸せそうな顔も。
立派に働いてる姿も。
見れたらよかったのに.....見たかった。
全部全部、見たかった。
まだまだ足りない。
大好きだよ。
こんなにすくすくと育ってくれてありがとう。
お母さんのもとに生まれてきてくれてありがとう。
爽がいるから幸せだよ。
全部全部言いたい。
抱きしめたい。
そんな私の後悔は止まることを知らなかった。
「ねぇ......さわ、本当は生きてるよね?」
思考が途切れた。機能しなくなった。
「死んだなんて嘘よね!?すぐそこに....いたんだもの」
手を伸ばせば届く距離に。
声をかければ振り向いてくれる距離に。
「目を覚ましてよ!!さわっ!」
爽に縋り付くように叫ぶ。
慰安室に響く声で。
「お願いだから.............」
そっと、肩に手が置かれる。
「七瀬....」
真矢は目いっぱいに涙を溜め、それを零すまいとゆっくり首を振る。
私はダムが壊れたかのように泣き続けた。
さっきまでも泣いていたのに。
涙は乾くことなんて知らなかった。
真矢はただ、そっと背中を撫でてくれていた。
まるで爽が私を慰めてくれているようで。
涙は止まらず、溢れてきた。
外の賑やかな話し声も、私の耳には届かなかった。
「大丈夫?立てそう?」
眉を下げて心配する真矢に言う。
「大丈夫、そんな深くないし。生きてるし」
真矢は息を飲み込んで"そっか"と呟く。
「じゃあ行こう」
しばらく移動して、着いたのは慰安室だった。
病室ではなく。
わかっていた。
でも、どこかでまだ期待している自分もいた。
目を閉じ、深く息を吸い込む。ゆっくり吐く。
何回か繰り返し、言う。
「中に入ろう」
真矢はただ頷き、中に入れてくれた。
「俺はなにも聞こえないし、見えないから」
私も病人だからだろう。
部屋に1人にするわけにもいかないからと。
少し不器用な優しさを背に、白い布がかけられた場所へ向かう。
布に手をかけ、一呼吸置く。
ゆっくりと手を動かすと、私の宝物が見えてきた。
「さわっ!」
あぁ....本当に.......この子は居なくなったんだ。
死んでしまったんだ。
どれだけ悔しい思いをしたんだろう。
私のせいで.....
私がもっと安全に気を配るべきだった。
ふと横に置かれていた爽の私物が目に入る。
警察も捜査を終え、置いていってくれたらしい。
できるだけ荷物を早く返せるようにと、捜査を急いでくれたとも後から知った。
逃げていたからだろう。
そこにはスマホしかなかった。
「バッグは家に置いてきたのね.....」
玄関に置かれたままのカバンを想像する。
あぁ、この子が ''わかってるよー''
そんなふうに言ってカバンを片付けることはもうないんだ。
次から次へと溢れ出てくる涙を。
言葉を。
せき止めることはもう、しなかった。
「さわっ、お母さんのせいでごめんね......」
まだ若いとかそんなのは関係ない。
ただ....生きていて欲しかった。
生きて、笑っていて欲しかった。
彼氏もできて恋に悩む姿も。
結婚して幸せそうな顔も。
立派に働いてる姿も。
見れたらよかったのに.....見たかった。
全部全部、見たかった。
まだまだ足りない。
大好きだよ。
こんなにすくすくと育ってくれてありがとう。
お母さんのもとに生まれてきてくれてありがとう。
爽がいるから幸せだよ。
全部全部言いたい。
抱きしめたい。
そんな私の後悔は止まることを知らなかった。
「ねぇ......さわ、本当は生きてるよね?」
思考が途切れた。機能しなくなった。
「死んだなんて嘘よね!?すぐそこに....いたんだもの」
手を伸ばせば届く距離に。
声をかければ振り向いてくれる距離に。
「目を覚ましてよ!!さわっ!」
爽に縋り付くように叫ぶ。
慰安室に響く声で。
「お願いだから.............」
そっと、肩に手が置かれる。
「七瀬....」
真矢は目いっぱいに涙を溜め、それを零すまいとゆっくり首を振る。
私はダムが壊れたかのように泣き続けた。
さっきまでも泣いていたのに。
涙は乾くことなんて知らなかった。
真矢はただ、そっと背中を撫でてくれていた。
まるで爽が私を慰めてくれているようで。
涙は止まらず、溢れてきた。
外の賑やかな話し声も、私の耳には届かなかった。