後悔しない、ひとつのこと
病院に着くと、エントランスで誰かに話しかけられた。

「こんにちは、廉くんで合ってる?」

そう話す車椅子の女性。

悲しみを抑え込んだ顔で笑うその女性は、どことなく爽に似ていた。

この人が電話に出てくれた人だ。

根拠はないけど、絶対にそうだと思った。

「爽、どこか怪我したんですか?」

そうじゃないことは電話をしている時からわかっていた。

わかっていたけど、俺の心はわかっていなかった。

「今から案内するね」

お母さんらしき人は一瞬顔を伏せて言う。

「......はい」

それしか言えなかった。
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