【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
三人で会場に向かって歩いていくと、歓声や拍手が聞こえてくる。

(今日はあの人たちと顔を合わせるのね。たとえ何があったとしても、わたしはもう逃げない。しっかり向き合わないと……)

大きな扉の前で緊張から自然と顔が強張っていくが、アデラールがいつものように微笑みを向ける。


「わたしは……うまくできるでしょうか」

「大丈夫だよ、シルヴィー。何かあっても僕がいる。君にはいつも笑っていてほしいんだ」

「……はい」


アデラールの一言で不思議と気持ちが上向きになる。


「母上、ぼくもいるよ!」


ホレスは自信にあふれた表情だ。
たくさんの人と関わるようになり発語も増えて活発だ。
積極的にいろいろなことに取り組んでいる。
シルヴィーもホレスに負けていられないではないか。

(ここにこられて本当によかった。もう不安はない……わたしには支えてくれる人たちがいるわ)

そう思うとがんばれるような気がした。

三人で会場に入ると、大歓声が沸き起こる。

ホレスも初めてのパーティーだ。その光景に少なからず驚いている。縋るような視線がこちらに向けられていた。
そんなホレスに大丈夫だと伝えるようにアデラールが肩に手を置くと、背筋を伸ばした。

シルヴィーもアデラールやマリアにはまだまだ届かないが、努力した成果が少しでも認められるようにと願うばかりだ。
シルヴィーも柔らかな笑みを浮かべる。
するとアデラールの表情がどんどんと固くなっているような気がした。

(〝君の笑顔は僕だけのものがいい〟とか、思っていそうだけど……気のせいかしら)

しばらくアデラールと過ごしていてわかったこと。それは彼の考えていることはほとんどシルヴィーのことだ。
ホレスがお辞儀をすると会場に割れんばかりの拍手が響き渡る。
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