【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
しばらく挨拶をしていると見覚えのある影。
そこにはレンログ子爵の姿もあった。どうやらミリアムと子爵夫人と一緒にいるわけではないらしい。

(どうして別々に? 彼女たちならドレスを見せびらかしに来てもおかしくないのに)

レンログ子爵は一言で言えば質素で地味だった。
ロランよりもひどく、一見すると平民のようだ。
あんなにも大きくて憎かったはずの父が随分と小さく思えた。
アデラールの空気が一瞬だけ鋭いものとなる。


「この度は御結婚おめでとうございます」

「……ありがとうございます」


彼はシルヴィーの前に立っても表情はまったく変わらない。
もう他人のように振る舞う父を見ても、シルヴィーは心を動かすことはなかった。

(わかってはいたけれど謝罪の一言もないのね)

売られそうになったことを考えれば、怒鳴りつけて罵り殴り飛ばしてもいいくらいだ。

(そんなことをする価値ないわ。ずっと苦しかった。愛されるかもと期待していたけど……もう興味すらない)

しかし意外なことに彼はホレスをチラリと見て、ぐっと唇を噛んだ。
後悔をしているとでもいうのだろうか。それにはシルヴィーも驚いていた。
このまま何事もなかったかのように思えたが、アデラールがレンログ子爵を引き止める。
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