【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
「……っ!?」

「おやおや、大丈夫かい……?」


肉厚で柔らかい何かに当たり跳ね返ってしまう。
勢いよくぶつかってしまったせいか、シルヴィーは後ろにフラフラと倒れそうになってしまう。
なんとか転ばずに済んで安心しているのも束の間、「大丈夫かい?」と、生温かい息がかかる。
無意識に体を引くと、手首を強く引かれて体ごと引き寄せられる。

(な、なに……!? 誰なの?)

シルヴィーはゆっくりと顔を上げる。
目の前にいる男性はお腹がでっぷりと膨らんでおり、汗臭い匂いが鼻につく。
先ほどの柑橘系の匂いはすっかりと消えてしまった。
しっとりと汗で濡れたシャツにゾワリと鳥肌が立ってしまう。


「は、離して……っ」

「ははっ、かわいらしいじゃないか」


反射的に距離を取ろうとするものの、壁に押さえつけられて身動きが取れなくなってしまう。
お酒のせいなのか視界がぼやけていき、力が入らずにされるがままになってしまう。
嫌だと叫ぼうとしても、大きな体で挟まれてしまい声が出ない。
嫌悪感から涙が滲む。ドキドキと心臓が警告するように高鳴っていく。

(どうしよう……! このままじゃこの人に……っ)

シルヴィーは助けを求めるように辺りを見回すのだが、こちらを小馬鹿にするように笑みを浮かべているだけで誰も動かない。
会場の真ん中で彼が何をしようとも止めることも気にする様子はない。
まるでこうなることが当然だと言わんばかりに……。

シルヴィーが悲鳴を上げる前に強引に腕を引かれてしまう。
それでもなんとか声を絞り出す。
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