【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
(あの人、どこかで……)

一瞬、頭の中に素晴らしい刺繍やレースが浮かび上がる。
それもパーティーに出席しているからだろうか。

シルヴィーが何かを思い出せそうな気もしたが、掴まれた手首の痛みで現実に戻る。

男性に掴まれている腕を振り払おうとするが、シルヴィーの体からどんどんと力が抜けてしまう。
あんな少しの量のお酒だけでこうなってしまうのなら、母の忠告を聞いて飲まなければよかったと思っても手遅れだ。
意識が朦朧とする中、ついに腰を掴まれて抱え上げられてしまう。

(嫌っ……! 振り払いたいのに体が思うように動かせない!)

精一杯、抵抗していたが、身動きができないまま部屋の中へ。
ベッドに放り投げられて、ふかふかなシーツに体が沈む。


「まんまと騙されおって……これだから生娘はたまらん。この天国から地獄に落ちていく瞬間が一番たぎるな」

「……ど、して」


シルヴィーはゆっくりと顔を上げる。
乱れた髪の隙間からは、荒く息を吐き出して唇を歪める男性が装飾がこれでもかと施されているコートを脱ぎ捨てた。


「ハハッ、お前は父親に売られたんだ! これは仕組まれたことさ」

「うそ…………お父様に?」

「そうだ。娘をやる代わりに金を貸していた分をチャラにするとな」

「──ッ!」

「ワシはマイケル・ラディング……覚えておけ。お前はラディング侯爵家の十番目の妻として嫁いでくるんだ」
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