【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
マリアが持っている唯一の手がかりである蝶が描かれたハンカチを見て、アデラールはため息を吐く。
十一年経っても見つからないのは平民の可能性もあるかもしれないと、魔法を使える少女を探していた。
その間も彼女への想いはどんどんと積もっていく。


ついにラディング侯爵の夜会に忍び込む日。
アデラールはラディング伯爵に警戒されないように髪色を暗く変えていた。
全顔を隠す仮面をつけて目立たないように潜入したつもりだったが、何故かすぐに女性たちに囲まれてしまう。
このまま派手に動くわけにはいかないと、丁寧に彼女たちを躱していく。
むせ返るような薔薇香り、派手なドレスと媚びるような甘い声。
仮面をつけていたとしても、その中身が透けて見えるのだ。

アデラールは今日までずっと彼女を思い続けていた。
強制的に気持ちを切り替えてすぐに情報を集めようとした時だった。

現れた目元が隠れる紅椿と金の模様が描かれている真っ白な仮面をつけた令嬢が現れた。
イエローゴールドの髪は少し癖があるのだろうか。ラベンダー色の瞳と目が合ったような気がした。
一瞬ではあったが、呼び起こされる昔の記憶。

(もしかして……彼女は。いや……まさかそんな)

全身の血液が沸き立つ感覚、心臓がこれでもかと高鳴っていた。
久しぶりだった。彼女に触れたら自分はどうなってしまうだろう。
流行りとは違うドレス、清廉な雰囲気。明らかにこの場に慣れていないのがわかる。
< 60 / 210 >

この作品をシェア

pagetop