【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
「あーあ、今夜ラディング侯爵の毒牙にかかるのはあのお花ちゃんなのね」
「ふふ、可哀想に……」
「今回のお花は元気ねぇ。いつもはもっと暗い顔をしているのに」
「侯爵はどれだけ可哀想な妻を増やせば気が済むのかしら」
近くにいる令嬢やご婦人たちは馬鹿にするように笑っている。
それを聞いてアデラールは目を細めた。
(…………彼女は絶対に渡さない)
アデラールは情報収集に勤しんでいた。
パーティーの頻度はどのくらい開かれているのか。ここで何が行われているのか。
チラリと仮面を半分だけ取り『あなただけ特別だ』と耳元で囁けば、面白いほどにペラペラとよく喋る。
自分の容姿が役立ち、こうして簡単に情報を引き出せるのは悪くない。
まさかこんなところにアデラールが潜入しているとは思ってはいないのだろう。
今回の令嬢は父親に売られるようにしてここに来たのだが、そのことにまったく気づいていないらしい。
家から追い出されたらパーティーで助けてくれる相手を探そうとするのは安易に想像できる。
彼女から悲壮感が見えないため不思議なのだろう。
(なんて最悪なやり方なんだ……ここにいるものたちはどうして笑っていられる?)
ここにいる女性たちも場所までは知らないらしいが、屋敷の中にラディング侯爵が令嬢を連れ込む最初の部屋があるらしい。
その前に甘くて飲みやすい飲みものに度数が高い酒を混ぜ込む。
たった二杯ほどで令嬢たちを酔わせて連れ込むそうだ。
当たり前だがウェイターもラディング侯爵の息のかかった者なのだろう。