【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜

それに今、彼女を守れるのはアデラールしかいないのだ。
ラディング侯爵に警戒されないように近衛騎士たちは屋敷の外で待機させていた。
アデラールはここに手引きしてくれた貴族の一人に、騎士たちや医師を連れて二時間ほど経ったら突入するように伝えてほしいと頼む。
いざとなったら魔法を使ってでも助け出す。この国にアデラールより大きな力を持っているものはいないのだから。

ラディング侯爵は屋敷の一番奥に椿の仮面をつけた令嬢を無理やり連れ込んでいる。
酒のせいなのか令嬢が意識が混濁して大した抵抗もできないようだ。
アデラールは下唇を血が滲むほどに噛み締める。
濁流に飲まれていくように心が黒く染まっていく。
彼女を渡したくない、頭はその思いでいっぱいになっていった。
ガチャリと鍵のかかる重たい音がここまで届く。

アデラールは彼女を囮としてしまったことを謝罪して誠実に対応しなければならない。
本当ならば今すぐに彼女を攫ってしまいたいと思っていた。

彼女は震えて取り乱して涙することだろう。
そう考えるだけでアデラールは耐えられない。

部屋に入った後、すぐにアデラールは動き出そうとするもののそこで予想外のことが起こる。
それはラディング侯爵と令嬢が入っていった部屋の前。
扉を守るようにガラの悪い護衛がたくさんいたからだ。
彼らは下品な笑い声を上げながら酒を煽っている。
誰にも邪魔をされないようにしているのだろうか。ラディング侯爵の用心深さを甘く見ていたようだ。
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