【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
シルヴィーの不安が伝わってしまったのだろうか。
ホレスの優しさに涙がこぼれそうになってしまうが、ぐっと堪える。
ホレスにこれ以上心配かけてはいけないと無理やり笑みを浮かべた。
彼は安心したのかそのまま眠ってしまう。
ホレスがいない世界などもう考えられない。

(このままじゃダメだわ。どうにかしないと……!)

シルヴィーはホレスの頭を撫でて、彼をシーツで巻いて隠すように歩き出す。

いつの間にか朝日が登っていた。
三日三晩ほとんど寝ずにつきっきりで看病していたせいが、足がフラフラとする。
しかし医師を呼びに行かなければとホレスを抱えて外に出た。
このまま寝てもホレスの体調は悪化するばかり。
ならば朝一番に見てもらった方がいいだろう。

シルヴィーは涙を拭いながらひたすら走っていくが、どんどんと視界がぼやけていく。

──ドンッ

誰かとぶつかってしまい、シルヴィーは顔を上げて謝罪の言葉を口にする。


「す、すみませ……」

「シルヴィー、遅くなってすまない」

「…………え?」


見覚えのあるライトブルーの瞳に泣きぼくろのある左目。
フードの隙間から覗くシルバーホワイトの髪。
優しげな笑みがホレスと重なっていく。
忘れていたはずの記憶が蘇る。

(……まさか、そんな…………どうして?)

シルヴィーの前には夜会の日に助けてもらったアデラールの姿があった。
周囲から姿を隠すためなのかローブをかぶっている。
シルヴィーの心臓部が勢いよく鳴っていく。
名前を呼んだため、アデラールはシルヴィーのことをわかった上で声をかけているのだろう。


「いや、今はシルヴィアと呼んだ方がよかったかな」

「なんで……」


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