【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
ホレスに不安が伝わったのか涙目になって、必死にシルヴィーにしがみついている。
何も言っていないのに離れないからとでも言いたげだ。
シルヴィーもホレスに気持ちを返すように抱きしめていた。

騒ぎを聞きつけてから人もちらほらと集まりだしている。
怒っているホレスに視線を合わせるようにアデラールは膝をつく。


「僕はママをいじめたいわけじゃないんだ。ただ一緒に来てほしいだけなんだよ」


カタカタと震えているシルヴィーを見て、ホレスはアデラールの腕を弾き飛ばす。


「……だめっ!」

「アデラール殿下、そろそろ……」


ベンがアデラールに耳打ちしていた。


「とりあえず馬車の中で話そう」

「……わかりました。ホレス、行きましょう」


ここで騒ぎを起こすのは避けた方がいいだろう。
アデラールたちの後についていくと豪華な馬車があった。
彼は何を思ったのか、シルヴィーの震える手を取りそっと口付けた。
それにはシルヴィーも驚いて顔を上げる。
ライトブルーの瞳はこちらをまっすぐに見つめていた。


「君は嫌なのかもしれないけれど、これだけは言わせてほしい。本当はあの時に告げるべきだったんだろうけど言えなかったから」

「…………っ」


シルヴィーは自分の死を受け入れる覚悟を決めて、ギュッと目を閉じた時だった。
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