そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~
午前の競技は、気づけば一気に流れていった。
玉入れ、綱引き、応援合戦。
どこを見ても人で、グラウンドはずっとざわざわしている。
スピーカーから流れる軽快な音楽とアナウンスの声。
そんな空気の中、ぼんやりと歩いていたそのとき。
……視界の端で、何かが動いた気がした。
人の流れの中に、ほんの一瞬感じた“違和感”。
その直後だった。
少し前を歩いていた蓮の足元に、不自然に人が近づいて。
ぶつかる、というより——
わざと距離を詰めて、足を引っかけるような動き。
「……っ!?」
蓮の身体が大きく揺れる。
転ぶ。
そう思った瞬間、体が勝手に動いていた。
「——蓮!」
考えるより先に腕を伸ばして、蓮の身体を引き寄せる。
次の瞬間、視界が傾く。
あ、やばっ、!
女の私が蓮の体重を支え切れるはずもなく、庇うように体勢を崩して——
どん、と。
鈍く重たい衝撃が、全身に走った。
「っ……!」
一瞬、息が詰まる。
周囲から、ざわっと声が上がった。
「大丈夫!?」
「おい、怪我人だぞ!」
「転んだだけか?」
側から見れば、“ただの事故”
実際、誰も深刻には捉えていない。
……でも。
胸の奥が、嫌な感じにざわついていた。
さっき、確かに見た。
蓮に近づいた“誰か”の動き。
偶然にしては、様子がおかしかった。
視線を巡らせるけれど——
……いない。