運命的な出会いには裏がある。
Prologue
 顔が良いなと眺めているだけだった。

 在宅勤務の私にとって人に会う回数は多くなく、毎週3回程その男性とは顔を合わせる。毎度家に物を届けてくれる人は、決まってその人で最近は親の顔より見ていたと思う。

 合図はピーンポーンと部屋中に響き渡るチャイムの音。

 インターフォンモニターを覗き込むと、いつも通り青色のシャツが特徴的で、帽子を被って大きな箱を持っている。

 通話ボタンを押して「はーい」と返事をすると『こんにちは~、お届け物です!』と声が聞こえてきた。よく聞く声だから名乗らずとも誰かまで分かってしまう。

 小走りして玄関に向かいドアを開けると、その男性と目が合う。そしてさわやかな笑顔で笑いかけてくれるのだ。


「こんにちは!」

「いつもご苦労様です!」


 箱を私に渡して「サインお願いします」と配達表とボールペンをいつもの様に渡した。

 中身は消耗品や食料品だ。買い物は中々行く時間が取れず、家に居ると買い物だけで外に出るのが面倒になってこうしてインターネット上で買い物も済ませてしまう。

 最初はそんな理由だったけれど、最近はこのタイプの顔をしたお兄さんにも会いたくて週3回に回数を増やしていたのだ。

 普段出会いも無く格好良い人なんてお目にかかれないので、そんな不純な理由からいつも意味も無く買い物をしていた。
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