鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「部長がお帰りになった後、彩芽さんがマーケティング部にいらっしゃったんです」
「っ……それで?」
「部長に用事があっていらっしゃったみたいなんですが、私の名前を把握された途端、空気が変わって……」
「まさか……」
「たぶん、私が部長を好きだとお気づきになっていたんだと思います。部長のことを諦めるように言われました。近く、婚約発表するからと。あとは、私ではコンテストでの入賞は難しいと……」

 孝仁の口から深いため息が漏れる。それに思わずびくりとすると、孝仁は梢を安心させるように優しく手の甲を撫でてくれた。

「前にも言った通り、彩芽さんとの交際は断っている。わかってもらえたと思っていたんだが、まだ諦めていなかったんだな」
「彩芽さんは、まるで確定しているかのように仰っていて……」
「絶対にない。彼女とプライベートで関わるつもりは一切ない。私の言葉が信じられないか?」

 はっきりと首を横に振る。孝仁の言葉は信じている。彼が裏切っているとは少しも思っていない。

「いえ、部長のことは信じています。ただ、彩芽さんがあまりにも自信たっぷりだから、私の方が自信なくなってきて……部長から見れば、私は不出来な人間じゃないですか。そんな私のどこを好きになってくれたのかな、とか考えてしまって。だんだん不安に……」

 帰宅する最中、ずっと考えていた。孝仁とのこの関係はこの先も変わらず続くのだろうかと。

 半ば強引に告白させられ、理解も及ばぬまま恋人の関係に進展してしまった。大切にされていることはわかるが、孝仁の心の内は未だによくわからない。

 いずれ飽きられてしまうのではないかという不安がどうしても拭えなかった。
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