鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
 孝仁宅のリビングで、向かい合って座る梢と孝仁。テーブルの上には湯気の立つコーヒー。

 突然押しかけたにもかかわらず、孝仁は梢を追い返すことなく家に上げ、コーヒーまで淹れてくれた。

 優しく気遣われていることが嬉しくて、でも、申し訳ない。孝仁に話をしなければと思うのに、どうしても言葉が詰まって出てこないのだ。

 そんな梢に呆れたのだろうか。孝仁は椅子から立ち上がると、一人でソファーへと移動してしまった。

 話すチャンスを逃してしまったと一人落ち込む。だが、それは梢の思い違いで、孝仁は梢をより一層気遣ってくれただけだった。

「牧野。こっちに来なさい」

 ソファーの座面を叩きながら、梢も移動するように促してくる。リビングテーブルよりも明らかに近い距離。彼のテリトリーに入れてもらっているとわかる状況に、少し心が和らぐ。

 梢は「失礼します」と口にしながら、孝仁の隣にゆっくりと腰を下ろした。それと同時に右手を彼の手で包み込まれる。

「ゆっくりでいい。牧野をそんなに不安にさせている原因を教えてくれ」

 手の温もりと優しい声音に背中を押される。梢は孝仁の手をきゅっと握りしめながら、先ほど自分の身に起こったことを語り始めた。
< 133 / 138 >

この作品をシェア

pagetop