鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「おー、ふわふわ。これは病みつきになりそう」
「そうやって商品を確かめるのもいいが、客の様子にも目を向けるといい。どういう基準で選んでいるのかを観察してみなさい」
「確かにその視点は大事ですね。お客さんの様子も観察してみます」

 言われたことは即実行だと客の様子を窺う。

 どの商品を見比べているか。何を決め手にしているか。そういったことを客の会話や行動から読み取る。

 客層によって選ぶ商品が異なるのが面白い。老夫婦が素材までしっかりと確認している一方、若いカップルはどのデザインにするかで揉めている。

 梢はカップルの会話を聞こうと彼らに少しずつ歩み寄る。一歩一歩と距離を詰め、会話がよく聞こえる位置まで来たと思ったら、なぜか突然孝仁に肩を抱かれた。

「っ……た、孝仁さん!?」

 あまりの近さに仰天する。

「じろじろ見すぎだ。もっとさりげなく観察しなさい」

 カップルに気づかれないよう、わざと肩を抱いて引き離してくれたのだと気づく。

「あ……すみません」

 孝仁との距離感も恥ずかしいが、今しがた注意された自分の行動も恥ずかしい。教えてもらえなかったら、怪しい人に見られるところだった。

 梢は羞恥心から逃れたくて、そそそと別の売り場へと移動した。
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