至上最幸の恋
 私の心は、なんて狭いのかしら。
 お相手の幸せを願えない、自分の気持ちすらコントロールできないような人間が、瑛士さんにふさわしいわけがない。

「忘れてしまうほうが、楽なのに……」

 つい口にしてしまうと、磯崎さんは悲しそうに微笑んで、静かに車を発進させた。

 怒らせてしまったかしら。
 せっかく励ましてくださっているのに、私は弱音ばかりで。こんなふうに愚痴をこぼしていては、磯崎さんを困らせてしまうわ。

 私は窓の外に目を向けて、ゆっくり流れる景色をぼんやりと眺めた。
 静寂が車内を包む。だけど、不思議と空気は重くない。
 
「ああ、事故渋滞だったんだ」

 ようやくスムーズに車が進むようになると、磯崎さんがひとり言のように呟いた。
 
「遅くなってしまって、ごめんね」
「とんでもないです! 送ってくださるだけで、とてもありがたいですわ」
「いや、今日は僕のほうがお礼を言いたいくらいだよ。エリサちゃんのおかげで、浅尾さんとたくさん話せたからね」

 瑛士さんと磯崎さんには共通点も多くて、とても馬が合うように見えた。

 絵と写真。表現の方法が違うだけで、おふたりとも「美」を追求していらっしゃるものね。だからこそ、あんなに楽しそうに語り合っていらしたのかもしれない。
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