至上最幸の恋
「無理していませんか?」
「ええ、問題ありませんわ。それより、なんのお話しでしたか?」

 黒瀬さんはまだ心配しているご様子だったけれど、私はそのまま話題を変えた。

「あぁ、えっと……日展のことです。来週の日曜なら、時間が取れますよ」
「本当ですか?」

 よかった。なんとか調整してくださったのね。

 絵を拝見して、瑛士さんに感想をお伝えして……この恋に区切りをつける。もうどれだけ想っても届かないのだから、自分で幕を引いて前に進まなくちゃ。
 
「その日は午前中に雑誌の撮影、14時から取材が1本あります。それが終わったあとは予定が空いているので、余裕をもって美術館に行けます」
「ありがとうございます。スケジュールの調整、大変だったのではありませんか?」
「それが僕の仕事ですから」

 なんでもないことのようにおっしゃるけれど、きっといろいろ気を配ってくださったのだわ。

 ありがたいことに、最近はお仕事の依頼をたくさんいただいていると聞いている。黒瀬さんは高梨さんから共有されたお仕事を、パズルのように組み合わせてスケジュールを作成してくださっていた。

「本当はもう1本取材依頼があったんですけど、それは別日でもいいということだったので、時間に余裕がある日に回しました」

 黒瀬さんはいつも物腰がやわらかく、相手を不快にさせることがない。だからきっと、日程変更の交渉もスムーズなのね。
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