至上最幸の恋
 高梨さんが私に黒瀬さんをつけてくださった理由が、よく分かる。心配性なところはあるけれど、信頼できる方だもの。

「エリサさんはアーティストでもあるし、絵画鑑賞はきっといい刺激になりますよね」
「はい。瑛……浅尾さんの絵だけではなくて、ほかの入選作品も拝見したくて」
「せっかくですから、少しゆっくりしてきてください。翌日の仕事はお昼からですし」

 ここ数か月は撮影とピアノのレッスンばかりだったから、時間を気にせず過ごせると思うだけで少し心が軽くなる。お仕事も大好きだけれど、のんびりとした時間もたまにはほしい……なんて、わがままかしら。

 私がほっとしていることも、黒瀬さんには分かっているのかもしれないわね。

「本当にありがとうございます、黒瀬さん」
「とんでもないです」

 そのやさしい言葉に、胸の奥がじわりとあたたかくなった。
 こんなふうに、いつも気遣ってくださる方がいる。とても幸せなことだわ。

 たとえ恋を手放すことになっても大丈夫。瑛士さんが示してくださった、この道があるから。自分にできることを精一杯やって、みなさんに喜んでいただくの。

 そのためにも、いまは自分の気持ちに鍵をかけておく。勝手に開いてしまわないように。そうしていれば、いつかこの気持ちも静かに遠のいてくれるはずだわ。
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