至上最幸の恋
 その場に取り残されたみたいに立ち尽くしていると、黒瀬さんが駆け寄ってきてくれた。

「控室に行きましょうか」
「あ、はい……」

 黒瀬さんに促されるまま、控室へ向かう。
 ちらりと磯崎さんに目を向けたけれど、スタッフの方に指示をしていて、こちらを見ることはなかった。

 控室に入ると、黒瀬さんが衣装を汚さないよう薄いガウンを肩にかけてくださった。

「黒瀬さん。私、どこかおかしかったですか?」

 ソファに座って尋ねると、黒瀬さんは私にお茶を差し出しながら、静かに首を横に振った。

「そんなふうには見えませんでしたよ。たぶん、磯崎さんなりに気になることがあったんでしょう」

 それでも撮影が止まったのなら、やっぱり私になにか足りないところがあったのだと思う。
 みなさんの前でおっしゃらなかったのは、きっと磯崎さんの優しさだわ。

 そのとき、控えめなノックの音がした。

「磯崎です。少し、よろしいですか?」

 黒瀬さんが立ち上がってドアを開けると、そこに磯崎さんが立っていた。

「黒瀬さん。いったん、エリサちゃんとふたりで話をさせていただけますか?」
「え、ふたりで……ですか?」
「はい。撮影を再開する前に、確認しておきたいことがあります」

 黒瀬さんは一瞬ためらったものの、磯崎さんの真剣な眼差しに小さく頷き、控室を出ていった。
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