至上最幸の恋
 それから、撮影はとても順調に進んだ。

 心持ちひとつで、こんなに変わるものなのね。さっきまではレンズばかり意識していたのに、いまは磯崎さんと対話しているように感じる。

 美を追求している方に対して、私はなんて失礼なことをしていたのかしら。

「最高だよ、エリサちゃん」

 磯崎さんの声も明るい。
 そのひと言が胸に沁みて、自然と肩の力が抜けた。

「すごく素敵でしたよ!」
「うん、本当に目が離せなかったです」

 撮影が終わると、スタッフさんたちが集まってきて、次々に声をかけてくださった。
 さっきまで自分を消そうとしていたのが、嘘みたいだわ。いまはただ、このお仕事が楽しい。

「お疲れ様」

 帰り際に、磯崎さんも声をかけてくださった。

「磯崎さん。今日は本当に、ありがとうございました」
「お礼を言うのは、僕のほうだ。最高の写真が撮れたからね。やっぱり、エリサちゃんとの撮影は楽しいよ」
「私も、磯崎さんとお仕事をさせていただくのは、とても楽しいです」

 これまでたくさんのカメラマンとご一緒してきたけれど、やっぱり磯崎さんは特別な気がする。技術の確かさだけではなく、安心して自分を預けられる気がするから。

 温かい余韻を抱えたまま、帰宅する。そしてオルゴールが入った鍵つきの箱を、なにげなく手に取った。
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