至上最幸の恋
薄氷に透けていたもの
日展で受賞してから、絵の制作依頼が一気に増えた。桂木さんのおかげもあって、少しずつ知名度が上がってきているらしい。
これまでの絵もいくつか売れたが、意外だったのは、その半数近くが海外のコレクターだったということだ。
しかもそのうちのひとりは、伊藤若冲の葡萄図と出会って以来、熱心に日本画を集めているというアメリカの著名な蒐集家。オレの絵をいたく気に入ったようで、依頼以外の新作を描いたら連絡をくれと言われた。
絵が1枚売れるだけで、ドライバーとして1か月に稼ぐ給料以上が手に入る。おかげで、画材を買う金にも余裕が出てきた。
それでも、画業に専念する覚悟は、まだ定まっていない。その希望すら、律にはまだ伝えられていなかった。
「あなた、行ってくるわね」
日曜日の昼。制作のために部屋へこもっていると、ドアの外から律が声をかけてきた。ひとまず手を止めて、部屋を出る。
「夕飯は温めて食べてね」
「あぁ、ありがとう」
ここのところ、律は外に出ることが増えていた。今日は会社の同僚とコンサートへ行くと言っていた。
最近はまた、オレも絵の制作にかかりきりだ。気を遣って家にいるより、外で息抜きをするほうがいいだろう。
オレ自身も、律が自由にしてくれていることが、正直ありがたかった。
これまでの絵もいくつか売れたが、意外だったのは、その半数近くが海外のコレクターだったということだ。
しかもそのうちのひとりは、伊藤若冲の葡萄図と出会って以来、熱心に日本画を集めているというアメリカの著名な蒐集家。オレの絵をいたく気に入ったようで、依頼以外の新作を描いたら連絡をくれと言われた。
絵が1枚売れるだけで、ドライバーとして1か月に稼ぐ給料以上が手に入る。おかげで、画材を買う金にも余裕が出てきた。
それでも、画業に専念する覚悟は、まだ定まっていない。その希望すら、律にはまだ伝えられていなかった。
「あなた、行ってくるわね」
日曜日の昼。制作のために部屋へこもっていると、ドアの外から律が声をかけてきた。ひとまず手を止めて、部屋を出る。
「夕飯は温めて食べてね」
「あぁ、ありがとう」
ここのところ、律は外に出ることが増えていた。今日は会社の同僚とコンサートへ行くと言っていた。
最近はまた、オレも絵の制作にかかりきりだ。気を遣って家にいるより、外で息抜きをするほうがいいだろう。
オレ自身も、律が自由にしてくれていることが、正直ありがたかった。