至上最幸の恋
「今日は、めかしこんでるな」
「えっ?」

 なにげなく言っただけなのに、なぜか律は一瞬目を見開き、視線を泳がせた。

「そんなに好きだったのか? ほら、あの……なんてグループだっけか」
「あ、あぁ。MAPSよ。なかなかチケットが取れない、人気アイドルなんだから。優子が粘って、なんとか取ってくれたの」

 ……気のせいか。いつもの律だ。

 そういえば、いつもアイドルが出ている番組を観ていたな。結婚して1年以上経つというのに、妻の好きなアイドルすら知らない。やはりオレは、結婚に不向きな男なのだと思う。

 夫として、妻を満たすことはできない。この先も、それが変わることはないのだろう。

「まぁ、ゆっくり楽しんでこいよ」
「うん、ありがとう。明日は、早めに帰れると思うから」

 コンサート後はいつもの同僚の家に泊まり、明日はそのまま会社へ行くそうだ。

 律の会社は人手不足らしく、ここのところ休日出勤も増えている。事務員がそこまで休日を削るものなのかと思うが、会社員として働いたことのないオレには、よく分からなかった。

 弾んだ足取りで出かける律を見送り、再び部屋へ戻る。
 いまのところ、制作は順調だ。エリサの絵を描き上げて以来、なにかが吹っ切れた気がする。自分の中で、描きたいものが明確になったからだろう。
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