至上最幸の恋
 エリサの横に立つのにふさわしいのは、きっと磯崎のような男だ。

 実際、ふたり並んで立つ姿には、他人が容易に入り込めない華やかさがあった。そのうち、自然に手を取り合うようになるのだろう。

 いや、そうであってくれ。身勝手だが、エリサには磯崎のような男のそばで幸せになってもらいたい。

「女々しいな」

 思わず自嘲してしまう。
 考えても仕方のないことだ。オレとエリサのつながりは、あの絵だけ。それでいい。それだけで十分だ。

 オレにできるのは、ただ絵を描き続けること。それがエリサや桂木さんたちへの恩返しになるし、律のためでもあるはずだ。

 いずれは子どもがほしいと、結婚前に律が言っていた。ただ、2年くらいはふたりで過ごしたいとも話していたので、まだ子どものことは具体的に考えていない。

 画家としてもっと稼げるようになれば、家族が増えても安定した生活を送れる。律にも、もう少し楽をさせられるだろう。
 個展の話も出ている。余計なことは考えず、とにかく描くのみだ。

 それからしばらくは、睡眠時間を削って制作を続けた。もちろん、ドライバーの仕事に差し支えるわけにはいかない。頭がぼんやりしない程度で、なんとか抑えた。

 本当なら、フラフラになるまで描き続けたい。だが、いまはまだ堪えるしかないと思った。
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