至上最幸の恋
 絵を描くことはもちろん大切だが、家族もかけがえのない存在だ。どちらも同じように大切にするのは、なかなか難しい。どうしても絵のほうに傾いてしまう。

 オレはこの生き方を変えられない。絵を描くことが、人生のすべてだ。たとえ家族の理解が得られなくても、描き続ける。

 そのことは、結婚前に律にも話していた。ただ、どこまで本気にしたかは分からない。そのうちオレが画家の道を諦めると、律は思っていた気もする。

 昼休みを終えて仕事に戻っても、慧の言葉が頭から離れない。
 もしかすると律は、オレの受賞を喜んでいたのではなく、いよいよ見切りをつけただけなのか。そんな後ろ向きな考えが頭をよぎる。

 なぜ、こんなに胸騒ぎがするのか。やはり会話が足りていないのが原因かもしれない。
 今日は仕事で遅くなると言っていたから、近いうちに今後のことも含めてちゃんと話しておこう。

「あれ、浅尾さん?」

 集荷した荷物をトラックへ積み込んでいると、声をかけられた。
 
「お久しぶりです~。私のこと、覚えていますか?」

 事務服姿だったので、最初は誰だか分からなかったが、よくよく顔を見ると思い出した。律の同僚だ。

「ああ、優子さんか」
「そうです、そうです!」

 律の口からはよく名前が出るが、顔を合わせるのは結婚式以来だった。
 ちょうどいい。最近の律の様子を、それとなく尋ねてみるか。
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