至上最幸の恋
 結局、制作はまったく進まず、ほとんど眠れないまま朝を迎えた。

 体調は最悪だ。しかし働かなければならない。コーヒー……いや、栄養ドリンクを買って飲んでおこう。

「おはよう……って、大丈夫?」

 部屋を出ると、律が朝食の支度をしていた。オレの顔を見て、心配そうに眉を寄せる。

「顔色悪いけど、寝てないの?」
「少し熱中しすぎたかな」
「コーヒー淹れようか」
「いや、途中で栄養ドリンクでも買うよ」

 いつものように、テーブルには和食が並んでいた。

 律も仕事をしているというのに、いつも手を抜かず食事を作ってくれている。それは、妻としての義務感なのだろうか。

 そうは思いたくない。どの料理にも心がこもっているのは、いつも感じていた。

「食べられそう?」
「あぁ。いただきます」

 味噌汁を口にすると、温かさが胃を優しく包み込んだ。
 律が作る食事は好きだ。毎日食べても飽きない。味噌汁の濃さもちょうどいいし、卵焼きの味つけも好みだ。なにより、旨味の染みた煮物は絶品だった。

 毎日の食事を作るのが、どれだけ大変なことか。それくらいは、オレにも分かる。
 これは間違いなく、律の心だ。
 
 オレはなぜ、愛情がないなどと思っていたのか。どうして、ここまでしてくれる妻より、絵のことばかり考えてしまうのか。
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