至上最幸の恋
長雨に濡れる寒椿
 今日、律が家を出ていった。

 離婚を決めたのは、もう2か月も前のことだ。紙切れ1枚で済むわけではなく、財産分与や名義の整理など、決めなければならないことはある。

 憎み合って別れるわけではない。それでも、思いのほか精神的な負担は大きかった。

 律は、ひとまず実家に戻ると言っていた。都内なので、勤務先にも比較的近い。
 オレも引っ越しを考えたが、いまは時間的な余裕がなく、ひとまずこのまま住み続けることにした。

 荷物が減った部屋は、やたら広く感じる。
 このままいると、ろくなことを考えそうにない。外へ出ることにした。

 2月に入り、世間の正月気分はすっかり抜けていた。いや、そもそも浮き足立ってもいなかったか。世の中は相変わらず不景気だ。

 なにも考えずに歩いていると、コレットの近くまで来ていた。
 しかし、ドアには「CLOSE」の札がかかっている。そういえば、今日は日曜日だった。

「瑛士、どうした?」

 踵を返そうとすると、ドアから慧が出てきた。

「いや、無意識に足が向いてな。お前こそ、定休日にどうしたんだ?」
「新メニューの試作をしてたんだよ。ちょうどいい、食っていかないか?」

 そう言われて、ようやく腹が減っていることに気がついた。
 律から言われていたのにな。やはりオレは、自分のことには無頓着だ。
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