至上最幸の恋
「うん。これもウマいな。ただ、もう少しソースがほしい」

 この照り焼きバーガーはレタスと玉ネギがたっぷり入っていて、かなりボリュームがある。学生も多い場所だし、量があるのは強い。

「やっぱり、そこをケチるのはよくないか」
「そうだな。ソースは多いほうが喜ばれるだろ。味は完璧だ」

 オレの言葉に満足そうに頷いて、慧もハンバーガーを食べはじめた。

 これまでにも、何度か新メニューの試食を頼まれたことがある。オレが太鼓判を押したものは、だいたい人気メニューになるらしい。

 それはおそらくオレの味覚というよりも、慧の発想力や柔軟性のおかげだ。突然サラリーマンを辞めたときには驚いたが、もともとこちらのほうが合っていたのだろう。

「パンの味もいいな」
「バンズな。いつも仕入れているパン屋に勧められて、試しに買ってみたんだよ。同じことばかりやっていてもつまらないしな。お前もそうだろ?」

 そうだ。オレも、本来はそういう人間だった。

 もう踏み出してしまったんだ。とにかく画業に邁進するしかない。最後まで世話を焼いて案じてくれた律のためにも。
 
「遠出するか」

 ぽつりと零すと、慧がにやりと笑った。

「そうこなくちゃな。過去に縛られていたら、新しい発想なんて浮かんでこないぞ」
「まったくだ。新しい空気を吸ってこねぇとな」

 山ほどある後悔を背負って、少しだけ旅に出よう。すべて置いてこられるとは思わない。それでも、少しは身軽になれるかもしれない。
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