至上最幸の恋
 手間を惜しんではいけない。効率ばかり重視する人間には、いいものは生み出せない。
 大学の教授に言われた言葉だが、紅茶の淹れ方ひとつをとっても、きっとそういう姿勢が出るはずだ。

 エリサのピアノは、どんな音を奏でるのだろう。少し興味が湧いてきた。

「あら、クロウタドリ」

 目の前に、体長25cmほどの黒い鳥が降り立った。
 この公園にはさまざまな鳥がいて、常になにかしらの鳴き声が聞こえている。なかでも、クロウタドリのさえずりは群を抜いて美しい。

 人間に慣れているらしく、オレたちを気にする素振りもなく、クロウタドリは軽やかなメロディを奏ではじめた。

「ふふ、素敵な声ね」

 エリサが鼻歌を歌いはじめる。
 ふたつの澄んだ声が重なり、心地いい空気に包まれた。

 オレは思わず、カメラのレンズをエリサへ向けた。友人から譲り受けた古い一眼レフで、絵のモチーフ探しのために持ち歩いている相棒だ。

 少女とクロウタドリの共演か。最高のモチーフだな。無性に描きたくなってくる。

 筆を取りたい気持ちを抑えて何枚か写真を撮っていると、即興のコラボレーションに満足したのか、クロウタドリはどこかへ飛んで行った。

「またね」

 まるで友人と別れるかのように、エリサがクロウタドリに手を振っている。
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