至上最幸の恋
「このアップルパイは、母の味と似ている気がするよ。……あ、こんなことを言ったら、マザコンと思われるかな?」
「ふふ、そんなことありませんわ。誰にでも、大切な家庭の味はありますもの」
「エリサちゃんは優しいね」

 磯崎さんが、少し照れたように微笑む。
 その表情は、とても穏やか。磯崎さんにも、こんなふうに懐かしさを大切にする一面があるのね。

 すると、夕子さんがワインを片手に近づいてきて、磯崎さんの肩に手を回して自分のほうへ引き寄せた。

「もぉ~、磯崎君! エリサちゃんとばっかりイチャイチャしちゃってぇ~!」
「別にイチャイチャしては……って、かなり飲んでますね、夕子さん」
 
 そういえば、夕子さんはお酒好きだと仰っていたわね。だけどお顔を見る限り、そんなに酔っていらっしゃるようには感じない。頬は少し赤いけれど、足取りは軽やかだもの。

「ねぇねぇ、エリサちゃ~ん!」

 今度は私の肩に手を回す。……け、結構お酒の匂いがするわ。

「せっかくピアノがあるんだし、なにか弾いてくれない~?」
「夕子さん。プロのピアニストに、そんな気軽にお願いするのは……」
「大丈夫ですよ、磯崎さん。私も、みなさんに聴いていただきたいので」

 撮影中、ずっと支えてくださったみなさんに、言葉だけでは伝えきれない感謝を届けたい。そう思うと、自然とピアノへ視線が向いた。
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