至上最幸の恋
 このお店に置いてあるのは、小ぶりなアップライトピアノ。丁寧に手入れされ、きちんと調律もされているようで、澄んだ音を響かせてくれる。

「エリサちゃんが演奏してくれるってよ~!」

 夕子さんが呼びかける。みなさん、食事の手を止めて、拍手をしてくださった。

 ピアノの音色は、ときに言葉よりも雄弁に語ってくれる。
 磯崎さんは写真、瑛士さんは絵。そして私は、このピアノ。心を伝える手段は、人それぞれあるのよね。

 ピアノの前に座って、小さく息を吐く。

 この賑やかな雰囲気に合う曲は……そうね。大好きなショパンにしましょう。
 ワルツ第1番『華麗なる大円舞曲』がいいわ。冒頭4小節の華やかなファンファーレが大好きなの。

 やっぱり、ピアノを弾くのは楽しい。自分の心を思いきり解き放って、音に乗せることができるから。

 モデルの仕事では、いろいろな顔を求められる。だけどピアノの前では、私そのもの。きっと、このバランスでいいのよね。

 演奏を終えると、カフェの店員さんまで大きな拍手を送ってくださった。

「さすがエリサちゃん、最高!」
「もう1曲~!」

 スタッフのみなさんが、次々にアンコールを求める。喜んでいただけてよかった。

「それでは……なにかリクエストはありますか?」
「はい、あるある!」

 元気よく手を挙げたのは、やっぱり夕子さん。クラシックはあまり聴かないと仰っていたけれど……。
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