至上最幸の恋
 ホテルのすぐ近くにある、ウィーン国立音楽大学。ここで学んだ日々が、遠い昔のように感じられる。

 それでも記憶は鮮明で、先生に厳しくご指導いただいたこと、仲間たちに励まされたことが、はっきり思い出せるわ。

 今日もまた、大きな夢と不安を抱いた学生たちが行き交っている。心の中でそっとエールを送って、その場を離れた。

 ウィーンの街は、忘れていた初心を思い出させてくれる。

 ピアニストとしてもモデルとしても、私はまだ成長の途中。もっともっと、自分を磨かなくちゃいけない。

 本当は、結婚を考えるより先に、やるべきことがたくさんある気がする。でも磯崎さんは、きっと「いますぐ」のことを仰っているわけじゃないのよね。

 だから私も、いま胸にある戸惑いだけで判断するんじゃなくて、しっかり未来を見据えないと。

 私はこの先、どうなりたい?

 奥さまのいる瑛士さんを想い続けても、それが届くことはない。だけど、届くかどうかだけで、この恋の価値が決まるわけじゃない。ずっとずっと、大切にしていきたいの。

 そこは絶対に変わることはない。ただ、この先の人生をひとりで歩いていくのかと言われると、はっきり答えられないというのが本音だわ。

 両親のように、いつまでも仲のいい夫婦に憧れていた。私もいつか、あんなふうに大切な人と手を取り合って生きていきたいと思っていた。
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